【GW特別企画】小説「ザ・リストラ2003」 第2章「非常事態宣言」 | ※個人の感想です。

【GW特別企画】小説「ザ・リストラ2003」 第2章「非常事態宣言」

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第1章「開戦」

ここまでのあらすじ:
時は2003年5月。
勤務先にてリストラの標的となってしまった、元山春樹(仮名)。
突然の退職勧奨に激しく動揺しながら、どう動くのか?

※この作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ありません。

第2章「非常事態宣言」

はっきり言って正気じゃない元山。
まずは誰かに自分の現状を吐き出さなければならない、と思って、
昔の上司にメールを打ちました。

「部長に希望退職を勧められました」

…ほんとはもっと長かったんですけどね。
そしたらその元上司の返事には

「私もです」

…今後突っ込んだ相談ができそうでよかったと思うべきなのか、何なのか。
すでに部長との面談で
「今の部署に置いとくことはできません」
と妙にていねいに言われてしまっているので、
仮に会社に残れたとしても今の仕事を続けるのは無理だろう。
そう思い、次は仕事で関わりのある人々にメールです。
元山は部長に希望退職を勧められました。
ついては、今後の業務の遂行が停止するおそれがあります。
お時間のあるときに引き継ぎについて打ち合わせを持ちたいと思います
たぶん社内一番早く「リストラだから引き継ぎ」と
言い出したんじゃないかと思います。
もっとも、引き継ぎうんぬんは口実で、
「ここにリストラターゲットがいるぞー!」
と知らしめるのが目的でした。
何せ、ターゲットじゃない人は
「どんなこと聞かれました?」
「んー、今はどんな仕事をしてますか、とかそのくらい」
で済んでるんだから、もしも言わなければ

「ああ、あの人辞めるんだ。次の当てもあるんだろうなー、
 勇気あるなー、やっぱ向上心のある人はちがうなー」

くらいに思われて終わりです。
「希望退職」とか言いつつ、それほどさわやかなもんじゃないぞ、
と知らせたい気持ちがありました。

まだ頭のぐらぐらは止まりません。
仕事関係が一段落したところで、次は仕事を離れた関係です。
来たる6月には、部署内の人が参加するゴルフコンペが予定されていました。
その幹事に宛てて、打ちました。
コンペに出るつもりでいましたが、
元山は部長から希望退職を勧められてしまいました。
立場が微妙なので今回の出場は見送らせていただきます。
6月は希望退職を受け付ける時期です。
とても「職場の人々と楽しむ」なんて余裕は持てないと思いました
(それと、部長以外の面談担当者が参加することがわかってました)。
そしてやっぱり「この部署にも切られそうな奴がいるんだ」と
教えたかったわけです。

そんな自爆テロみたいなことを終えて、終業のチャイムとともに家に帰りました。
まだ不安感たっぷりの頭で、両親に面談のことを洗いざらい話しました。
もちろん両親の答えは「辞めるな」です。

転職先も決まらないのに辞めるのは損だ、
退職金を積み増しされても使い切ったらそれまでだ、
今時そう簡単に次の仕事は見つからない…

もっともなことを言われました。
結局、一晩寝てようやく気を取り直しました。

落ちついてからもなお、元山のカミングアウトは続きます。
会社側はターゲットを精神的に孤立化させて、疲れ果てさせた末に
「もうしんどいから辞めよう…」という気持ちにさせる戦略があるみたいです。
なら、

このショックはみんなで分け合おうよ。

と考えたわけです。(周りの方々には迷惑な話ですけど)
ある時は休憩室で、同僚に。
またある時は、仕事の打ち合わせ時に。
元山、職場では「もっちゃん」と呼ばれておりました。

「もっちゃん、今度こんな仕事してほしいんだけど…」
「先週部長に希望退職を使ってほしいとか言われたんでちょっと無理です」

やがてこのことは部長の耳にも入ったようです。
最初の面談から1週間後に2回目があったんですが、そこで言われました。
「打ち合わせで言っちゃったんだって?不安があったんだね」
まあ、普通はそう思うでしょう。

この2回目の面談では、希望退職のメリットばかりがたっぷり語られました。
でも、再就職支援サービスって、仕事を探してきてくれるわけじゃないんですよね…。

前回よりかなり落ち着いた元山、
この回は「籍は残したい。職種にはこだわらない」みたいなことを言いました。

「こういうときは録音しておけば、何かのときに証拠として出せる」
という情報を得た元山は、電器店でICレコーダーを買うことにしました。
いろいろ並んでて迷ったんですが、結局は店員のアドバイスに従って
「内容をパソコンに吸い出せるやつ」にしました。
そしたらCD-Rに焼いて保存できるからと
(そのとき元山が持ってたパソコンにはCD-Rドライブなかったんですが、
焼かねばならなくなったら買えばいいだろうと考えました)。
これに、

「会議など録るんでしたら、タイピンマイクを使った方がきれいに録れていいですよ。
内蔵マイクだと、ポケットに入れてたときはごそごそノイズが入りますから」

ということで、マイクも買いました。

3回目の面談をする頃には、もう6月に入っていました。
次の週になったら、もう希望退職の募集が始まります。
その面談に、いよいよこのICレコーダーを持ち込みました。

会議室に入る前に、近場の給湯室で録音ボタンを押します。
そして、会議室のドアをノックしました…。
「あ、入って」部長の声がしました。

「私がこうしてお話をするのは、今回が最後になります。
 以後は人事の人か、『プロ』が出てくることになります。
 今回のリストラですが、人事は本気です。
 今後どうなるのか、元山さんのことが心配です。」

相変わらずの異様なていねいさに、
「部長、本気で言ってないでしょ」と突っこみたくなりましたが、
じっと我慢です。
この回はこちらの意見を聞き入れそうになかったので、
「考えさせてください」と一応言いました。
辞めるつもりは、全然ありません。

やがて、予定通りに募集は始まりました。
初日、元山はかかりつけの精神科で診察を受けていました(待ち時間長くて診察は数分…)。
当然、リストラの話もします。最大のストレス源なので。
先生は「辞めないようにね」と言ってくれました。
自分の方針は間違ってないな、と思いを強くしました。

募集期間の日々は、何事もなく過ぎていきました。
人事部の人から面談の呼び出しがあるでもなく、
「プロ」が出てくるわけでもなく。

このままほっといたら、案外募集定員に達してしまうのかも?

そんな、甘い考えに傾きそうになっていた、6月下旬のこと…。

第3章につづく。
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